レッスン力学整体(対話編)


 ここには、愛すべきあすなろ君あすなろさんと、イヤミタラシイ傍白氏と、少しトンマな力学整体師トーベン先生が出てきますが、何だ、この傍白は、どうやらこれを読んでる自分らしい、なんて、ヒガンデはいけませんよ。
 なお、ついでながら、この「傍白(ぼうはく)」の本当の意味を知らない人は、すぐに当サイトのトップページへ行って辞書で調べてください。
 そういう人は、いわゆる積極派、力学整体に強くなることうけあいです。

 (傍白氏) 対話形式のレッスンだとか。一体全体、どんな話が始まることやら・・・。

 あすなろ君 もともと礒谷式力学療法をやっておられた先生が、どうしてこの力学整体をお考えになったのでしょうか?

 (傍白) おいおい、あすなろ君って、いったい誰なんだ!? 「あすはげんき(元気)になろう」っていう人なのか・・・?

 トーベン先生 私は、大学を卒業してから、民間療法の世界に飛び込んだのですが、最初は「自然良能会」の五味雅吉先生の「骨盤調整法」からでした。
 はじめて五味先生の本を読んだ時には、ビックリしました。
 とういのも、それまで背骨が曲がって病気になることがあるなんて、考えたこともなかったからですね。
 「そうか、そうか、背骨が曲がると病気になることがあるんだ」というふうに、そのことを知った時には、それはもう驚きでしたね。
 さらに、五味先生の本には、背骨が曲がるのは、背骨自体が単独で勝手に曲がるのではなくて、背骨を支えている土台の役割をしている骨盤がゆがむから、その土台である骨盤の上に乗っかている背骨もそれに応じて曲がるのだというようなことが書かれてあったのです。 そしてそこには、骨盤がゆがむのは、腸骨と仙骨を結んで骨盤を形成している仙腸関節がズレるからだと書いてあったのです。
 この本を読んだ時には、なるほど背骨だけを直接矯正する治療法よりも、土台である骨盤を矯正する治療法のほうが、より原因にさかのぼって矯正する方法だということで、五味先生の「骨盤調整法」は一歩先を行っているぞと思いました。  

 (傍白) おやおや、トーベン先生だって! 「答弁」してるから、トーベン先生なのかい?

 あすなろさん じゃあ、先生は、はじめは礒谷療法からスタートされたわけではないんですね?

 (傍白) 今度は、女の子が登場かい! 同じ名前ということは、二人は兄弟なのかねぇ〜? それとも、まったくの赤の他人なのか?

 トーベン先生 そうなんですよ。この五味先生の本は、当時の私には、すごい説得力があったわけです。
 しかし、本を読んで、それではなぜ仙腸関節がズレるのかという点に、非常に疑問を持ちました。
 なぜか骨盤がゆがむ理由をはっきりと書いておられなくて、そこの点がずっと引っ掛っかっていました。
 けれども、その他の点では、納得できるものがあったので、「骨盤調整法」は2年間体験しました。
 最初の頃は、施術を受けると本当に体が軽くなりました。
 ですから、民間療法といっても、これはインチキじゃないと思いました。
 ところが、そのうちだんだんと最初の頃のように施術を受けても体が軽くならなくって来たのです。
 その当時は、どうしてだろうかと漠然と考えることはあったのですが、理由はよくわかりませんでした。
 この体験があったからこそ、のちに「治療の本質」とか「治療中毒」とか「治療依存症」の問題が分かるようになったんです。

 (傍白) ふう〜ん・・・。

 あすなろ君 なるほど、先生は五味先生の「骨盤調整法」からスタートされたわけですか。

 トーベン先生 東京の大崎の本部で行なわれていた五味先生の講習会にも参加したりしました。
 その後、いろいろな治療法を体験しましたけど、いわゆる整体・カイロというのは、この「骨盤調整法」とほとんど大同小異と言う感じで、非常に施術方法が似ていますね。
 これは、それぞれの治療法が、他の治療法を研究して、良いものは取り入れているからでしょう。
 そのため、どうしても似てくるのでしょうね。   

 あすなろさん それらの治療法が似ているというのは、どういうところなのですか?

 (傍白) そんなこともわからないのかね〜。

 トーベン先生 それはですね、全身の関節を動かして、矯正音を鳴らせるというところです。
 人によっては、このやり方を非難される方もいらっしゃいますが、私の体験では、それなりの効果はあると思います。
 そのことは、きちんと認めるべきだと思うのです。
 ただ、骨のズレを治しているから、効果があるのだという説明に問題があるのだと思うのです。
 当時は、私もその説明で納得して信じていましたけど、現在では、そうした説明は正しくないし、間違っていると考えています。
 それに、もっと本質的な問題があるのですが、その説明は後でしましょう。
 それから、全身の関節を動かして矯正音を鳴らせるやり方だと、人によってはピリピリという感覚が神経にそって走るという場合があるようですね。

 あすなろ君 へー、そうなんですか。

 トーベン先生 それから、少ししてから、橋本敬三先生の「操体法」という治療法を知りました。

 あすなろさん その「操体法」というのは、どんな治療法なんですか?

 (傍白) やれやれ、そんなことも知らないのか!有名な治療法じゃないか。

 あすなろさん ちょっと、傍白さん、うるさいですよ!

 (傍白) ・・・・・・・・・・。

 トーベン先生 「操体法」というのは、いわゆる整体・カイロとはちょっとやり方が違う治療法で、患者さんが楽な気持ちいい方向へ自分で動いて、ある程度動いたところで、ほんの短時間のあいだだけ力を入れて静止したままの状態を保持して、その後、瞬間的に脱力するというやり方をしています。
 それに対して、施術者側は、患者さんの動きに抵抗を与える役目をするわけです。

 あすなろ君 だいぶん、変わってる治療法ですね。

 トーベン先生 私自身は、この治療法に早くから関心を持っていて、東京の秋葉原にある「津田温故堂」の渡辺栄三先生が主催されておられた勉強会に1年間通ったこともあります。

 あすなろさん かなりの熱の入れようだったんですね。

 トーベン先生 そうですねー。
 操体法は、非常にシンプルな方法なんですが、実際にやってみると、これがなかなかやり方のコツをつかむまでが、みなさん、大変なようです。
 それに、その人の体の歪みがひどかったり、やり方が悪かったり、やり過ぎたりすると、かえって全身の筋肉が過度に緊張してしまったり、非常に疲れてしまったりするようで、いい指導者についてやることが大事だと思います。
 しかし、私自身は、操体法が、はじめて全身の歪みという観点から、人体を全体的に捉えていているという点を非常に評価すべきだと考えています。
 力学整体も、その影響を大きく受けてます。
 それに、何より操体法の考え方が、私は大好きです。

 あすなろ君 それはまた、どういう点が好きなんですか?

 トーベン先生 それはねー、操体法には、なんか好い加減なところがある点です。
 理屈なんかはどうでもいいから、ただ気持ちがいい方向へ動かせば、それでいいんだっていうのですから、大雑把なんですよ。
 シャカリキになっていないところとでも言えばいいのでしょうか?
 病気になると、それはもう治したい一心で、気持ちに余裕がなくなるんです。
 それに、礒谷療法をやってた頃は、先生である私も患者さんを治したい一心で、それはもう責任感の重圧がのしかかっていて、気持ちにゆとりがなくなっていたところがありました。
 渡辺栄三先生から、教わった言葉で一番ショックを受けたのは、
 「気持ちがよかったら、治らなくてもいいじゃない!」
って言われたのを聞いた時でしたね。
 こんな言葉を言える治療家がいるんだと驚きました!
 というのも、当時の私自身は、とにかく「患者さんを治さなきゃ、治さなきゃ」ってことばかりを考えていて、自分で苦しんでたところがありました。
 それが、自分が一日中考えてたこととまったく反対のことを聞かせれたわけですから・・・。
 そりゃ、もうビックリしましたよ。

 あすなろさん そんなセリフを吐けるなんて、すごいですね!

 (傍白) 何を感心してるんだか? おかしいんじゃないの?

 あすなろ君 先生!それって、ちょっと、無責任過ぎやしませんか?

 トーベン先生 うん、そう考える人もいると思うよ。
 でもね、治療のことがわかってくると、この言葉の重みが理解できるようになってくるんだ。
 当時の私には、まだその言葉の重みをよくわかっていなかったけど、その言葉を聞いて気持ちがすごく軽くなったことは確かなんだ。
 何だか、本当に救われたような気持ちさえしたよ。
 いつも、いつも、治すことばかり考えていたからね。

 あすなろ君 ふう〜ん、そんなものですか。
 でも、僕にはよく分かりませんよ。
 患者さんに対して無責任ではないかと思うのですが・・・。

 トーベン先生 そうだろうね。 私が、その意味を本当に理解できるようになるまでには、約10年かかったからねえ〜。
 でもね、患者さん自身でも、治療というものに取り組む時には、そういう姿勢がとても大事なんですよ。
 今は、この話は、これぐらいにしておきましょう!

 (傍白) おっ、何だか、うまく逃げようとしてるぞ!

 あすなろ君 なんだか釈然としないなあ〜!

 あすなろさん わたしは、なんとなく分かるような気がするわ・・・。

 あすなろ君 じゃあ、先生、話しを先に進めるとして、先生は、どうして礒谷療法と出会われたのですか?

 トーベン先生 それはねー、礒谷公良 『奇跡の礒谷療法』(祥伝社)という1冊の本との出会いからでした。
 実は、この本のことは、ずっと以前から知っていたのです。
 ところが、この本、表紙のカバーにリンゴの写真が載っていて、サブタイトルが「薬も使わず、手術もせず」となっていたので、恥ずかしい話なんですが、てっきり礒谷療法というのは食事療法なんだと、ずっと誤解していたのです。
 それで、いまの自分には直接関係ないやと思って、本の存在は知っていたけど、すぐには読もうとはしなかったのです。
 実際に、本を読み始めたのはずっと後からのことです。

 (傍白) バカじゃないだろうか?

 あすなろさん それでは、どうして先生は、その本を読もうという気になられたんですか?

 トーベン先生 うん、それはね、手技療法の関係で読む本がなくなってしまって、じゃあ、食事療法の本でもいいから読んでみようかという軽い気持ちで読み始めたんですよ。
 そしたらね、内容が食事療法の本とは全然違っていて、びっくりしました。
 それだけではなく、五味先生の「骨盤調整法」の本を読んでから、ずっと疑問に思っていたことに対する回答が、その本にはあったのです。

 あすなろ君 わかる、わかる!先生、発見の喜びですよね。でも、先生の疑問って何でしたっけ?

 あすなろさん まあ!

 (傍白) あすなろ君らしいや。

 トーベン先生 えーとですね、疑問というのは、五味先生の説では、背骨が曲がるのは、仙腸関節がズレて、骨盤がゆがんで傾くのが原因だとされていましたよね。
 しかし、どうして仙腸関節がズレて骨盤がゆがむのか、その理由がずっとわからないでいたのです。
 そこのところが分からないと、本当の意味で分かったと言えないんじゃないかと思っていました。
 それで、そのことがずっと気にかかっていたわけです。

 あすなろ君 そうだ!そうだった!覚えていますよ。

 あすなろさん まあ、調子がいいんだから!

 (傍白) 本当にわかってんのかね?

 トーベン先生 ところが、礒谷先生の本には、その回答が書かれてあったわけです。
 それはもう、読み進むうちに私の目の色が違ってきましたからね。
 最初は、のん気に読み始めてたのに、あれ?あれれ・・・?っていう感じで、内容が分かっていくうちに驚きましたよ。
 自分の疑問に対する回答が、そこにあったわけですから・・・。
 一気に読み終えてしまいました。
 自分の疑問を解決していた人が、世の中にはいたんだっていう思いでいっぱいになりました。
 それこそ、もう感動です!
 礒谷先生の発見は、ノーベル賞級の発見だと思いました。

 あすなろ君 そりゃ、すごいや!先生の感動が伝わってきますよ。

 (傍白) 本当に調子がいい奴だな。

 あすなろさん ところで、先生、その本には何が書かれてあったのですか?それが分からないことには、わたしには先生の感動が理解できないのですが・・・。

 (傍白) それが本当だろう。あすなろ君は、何もわからないくせに勝手に感動してるんだから、あきれてしまうね。

 あすなろ君 僕だって、本に何が書いてあったか知らないけど、ちゃんと先生の感動を感じているんですよ。

 トーベン先生 そうですね。どうして感動したか、どこに感動したかを、お話しなければいけませんね。

 あすなろ君 それ、それ、それが聞きたかったんです!

 トーベン先生 それはですね、仙腸関節がズレて、骨盤がゆがむ原因は、股関節にあったんだ!っていうことなんです。

 あすなろ君 股関節ですか!?

 トーベン先生 そうなんだ。股関節というのは、「大腿骨」という脚の骨と「腸骨」という骨盤の骨とが接している関節でね。そこの部分で、大腿骨が腸骨に対して、外側に向いた状態になると脚が長くなり、内側に向いた状態になると脚が短くなるということを礒谷先生は発見されたのです。そうすると、長い方の脚は地面から高くなり、短い方の脚は地面から低くなりますから、骨盤は、長い方の脚の側の腸骨が上へ押し上げられて高くなり、短い方の脚の側の腸骨が下へさがることになり、それによって、腸骨がズレることになり、腸骨がズレることによって仙腸関節にズレが生じて、仙骨もゆがむことになり、結果として、骨盤がゆがみ傾くことになるのです。

 あすなろさん そうなんですか!それだと確かに骨盤や仙腸関節が原因だとする説よりも、2段階も大本の原因を明らかにしていますね。それなら、先生が感動なさるのも無理ないですわ。

 あすなろ君 うん、うん、わかる、わかる。確かに、先生、骨盤は背骨の土台であるわけだけど、その土台である骨盤を支えているのは2本の脚ですからね。その2本の脚で長短差が生じれば、土台である骨盤を同じ高さで支えられなくなりますからね。こりゃ、すごい!教えてもらえば、なるほどと思うけど、自分ではなかなか考えつかなでしょうね!

 (傍白) 何だか、わかったようなことを言い出したぞ!

 あすなろさん そうねー。先生、コロンブスの卵と同じことね。

 あすなろ君 なんだい、そのコロンブスの何とやらというのは?それって、おいしいのかい?

 あすなろさん まあ、知らない!

 (傍白) やっぱり、これだ。

 トーベン先生 そうだね。私も、それを知ったときには、自分だったら一生かかっても思いつかないだろうなと思いましたよ。その点、礒谷先生というのは、本当にすごい人だと思います。でもね、礒谷先生も、はじめから礒谷療法の理論を発見されたわけではないんです。ある意味で、偶然発見されたと言ったほうが事実に近いかもしれません。

 あすなろ君 先生、その偶然の発見というのは、どういうことなんですか?

 トーベン先生 うん、それはね、順を追ってお話していきますからね。
 礒谷先生は、もとは大阪医大に勤務していた薬剤師だったのですが、叔父に当たる方が接骨業(ほねつぎ)をされていて、そこを継ぐために薬剤師を辞められたんだね。
 そして、接骨業をやっていくことになったんだけど、礒谷先生というのは、研究熱心な人だったんだね。
小児マヒとか脳卒中の人の跛行を見られて、何とか治せないものかというふうに考えられて研究を始められたんだ。

 あすなろ君 先生!「跛行」って、なんですか?

 (傍白) そんな言葉も知らないのか?

 トーベン先生 それはねー、差別用語の問題があって、ちょっと説明を言いにくいんだ。もし、言葉の意味が分からないようだったら、辞書を引いて調べてほしいんだ。

 あすなろさん 先生、わたし辞書を持って来ています。あすなろ君、わたしの辞書を使って調べてみて・・。

 あすなろ君 あすなろさん、サンキュー!
 えーっと、跛行、「はこう」っと。 あった、あった! あったぞー!
 ・・・・・・・・・、へー、そういう意味だったんだ!
 なんだか、難しい漢字を使っているので、僕の知らないことかと思ったら、そうじゃなかったんですね。
 僕でも知ってることではないですか!意味がわかるかどうか心配しちゃいましたよ。
 よーし、わかったぞー!
 あすなろさん、辞書、助かりました。 ありがとう!

 あすなろさん どういたしまして。お役に立てて嬉しいわ。

 トーベン先生 さて、跛行の意味がわかったところで、もう一度説明の続きに戻ろうか。
 当時、跛行の原因は、脳に障害があるためとされていたんだが、礒谷先生はどういうわけか、それに疑問を持たれたわけなんだ。他に跛行の原因があるんじゃないかってね。
 それで、礒谷先生は、ひょっとして脚の長短に原因があるんじゃないかと思いついたってわけさ。

 あすなろ君 そりゃ、そうだ!脚に長い、短いということがなければ跛行するはずないですよね。それは、僕にもわかりますよ。

 あすなろさん そうね・・・。

 トーベン先生 そこでだ!それじゃ、どうして脚に長い、短いなんて現象が起こるんだろう?

 あすなろ君 う〜ん、それは難しい・・・。

 あすなろさん あらっ!それは、先生がさっきおっしゃってたわ。脚の骨である大腿骨が外側にねじれると脚が長くなり、反対に内側にねじれると短くなるって、さっき先生が説明されてたばかりじゃない?

 (傍白) やっぱり、何も聞いてないな。

 トーベン先生 うん、あすなろさんの言うとおりなんだ。この発見が、礒谷療法の眼目なんだ。
 礒谷先生は、跛行の原因に脚に長短が関係していると考え、では、なぜ脚に長短が生じるのかという疑問を追求していったんだ。
 そこで、礒谷先生は、足首の関節と膝の関節は、前後に動くだけだから、これらがどんなにねじれようと脚の長短とは関係ないだろうと判断されて、股の関節に注目されたんだ。
 恐らく、脚の長短が生じる原因に、股関節が何らかの関係をしているのではないかと推測されたんだね。
 当時は、法律の規制もゆるくて、レントゲンを撮りながら研究をしていったみたいだね。


   (次回に、つづく)