治 療 の 本 質
ここでは、これまで誰も考えることのなかった「治療の本質」ということについてお話していこうと思います。
これから述べていく内容は、平成9年の春に私がやっと気がついたことです。
ですから、私がこれからお話する内容については、みなさんはこれまで聞いたことのないものになるはずです。
治療家の先生方でも、このことに気がついている先生はほとんどいらっしゃいませんし、たとえ部分的に気がつかれていても、これからお話しする内容ほどには深く追求されて考えておられませんでしょうから、おそらく私がはじめてまとめた考えということになります。
治 療 が ク セ に な る
みなさんの中には、いろいろな治療を受けられたことがある人もいらっしゃるかと思います。
その中で、腰痛や肩こりなどで困っていたところ、ある治療を受けたら、1回の治療で治ったとか、ものすごく効いたとか、体がとても楽になったなどという話を聞いたり、体験をされた方もいらっしゃると思います。
しかし、もし、そうした治療でいったんはよくなった症状が、元に戻ったとしたら、その人はいったいどのように考えるでしょうか?
みなさん、実は、ここからどう考えるかが重要な点なのです。
結論から先に言いますと、「また、あの治療を受けて治してもらおう」と考えるのではないでしょうか?
まず、おそらくは、ほとんどの人がそうだと思います。
そこでは、なぜ症状が元に戻ったのかということについて見直しをされる人はいないはずです。
そして、また同じ治療を受けてよくなられるでしょう。
まあ、これだけの話だったら、何も問題はないわけですが、実は、治療には、これだけでは済まない深刻な問題があるのです。
というのも、今回の治療では、前回の治療を受けた後よりも、早く元の状態に戻りやすくなるからです。
これは、体が「治療を受ける」ということに対して順応し始めるからですし、また体質が根本から改善されていないからでもあります。
そのため、治療を受けて一時的に症状は改善するものの、そのうち症状が再発してきて、また治療を受けるということを繰り返すようになります。
それだけではなく、こうしたことを繰り返していると、治療を受けてから症状が再発するまでの期間がだんだん短くなって来るのです。
つまり、治療を受けなければならない周期が、徐々に短くなるということなのです。
こうなると、治療と再発の繰り返しになりますから、はっきり言って、その人は治療がクセになってしまっていると言わざるを得ません。
せめて、このへんで気がついてくれればいいのですが、治療を受ければある程度は楽になりますから、なかなか気がつきにくいのです。
世の中に、まだこうした現象についての知識が普及していませんし、専門家の先生の中にも、こうした知識がない先生もいらっしゃいますから、一般の人が気がつかないのも無理のないことかもしれません。
クセの状態になってくると、治療を受けても以前ほど楽にはならなくなっていますから、そういう人たちは、こうした現象をどう解釈するかというと、どうも最近は「治療が効かなくなってきたな」というふうに受け止めることになります。
そうなると、もっと治療を効かせてもらうために、施術を強くしてもらおうとか、別の治療院へ行こうなどと考えるようになります。
そして、再び治療を受けることになるわけですが、それからどうなるでしょうか?
もう、ここまでくれば、みなさんもお分かりなるかと思いますが、さらに元の状態に戻る期間が短くなって来て、治療を受けなければならない周期は早まることになります。
これを繰り返すたびに、ますます期間が短くなって周期は早くなってくるという結果になってしまうのです。
このようにして、治療を受けることによって、かえって体は悪くなっていくのです。
例えば、初めの頃は月に1回で済んでいた治療が、週に1回は通わなくてはならなくなってきて、そのうち毎日通わなければおさまらないようになってくるのも、そのためなのです。
このような現象を、力学整体では『治療がクセになる(治療習慣性)』と言っています。
薬物中毒とか薬物依存症という言葉があるように、この治療がクセになった状態を力学整体では『治療中毒』とか『治療依存症』と表現したりすることもあります。
これは、治療を受けることによって、治療を受けないといけない体になってしまっているわけです。
どうしてこんな馬鹿げたことになるのかについて理解しようとすれば、どうしても治療というものの本質について深く考えなければなりません。
ですから、治療の本質という問題は避けては通れませんので、おいおいお話するとして、まずは、『病と治療の悪循環』についてからお話してゆきたいと思います。
病 と 治 療 の 悪 循 環
いろいろな治療法を受けたことのある人ならご存知だと思うのですが、ほとんどの治療法には患者さんの生活を見直そうという考え方がありません。
つまり、施術者は施術をしたらしっぱなしだし、患者さんのほうも施術を受けたら受けっぱなしの状態です。
そこには、なぜそんな体になったのかとか、治療を施すだけでなく治療後にまた元に戻ってしまわないようにするにはどうしたらいいかとか、ある症状はよくなったけれども体質から改善されていないので後からまた別の症状が出て来てしまうことがあるとかなど、全くといっていいほど考えられていません。
先ほどもお話したように、治療を受けて一時期は症状が改善するものの、また症状が再発することの裏には、その症状を作って来た本来の原因があるからです。
その原因を取り除かない限り、また元に戻るというのも当然と言えば余りにも当然な話なのです。
その原因というのは、普段の日常生活の中にあるのです。
しかも、長年にわたって絶えず繰り返される日常生活の習慣になっている行為が原因となっているのです。
ですから、せっかく治療を受けても、悪い生活習慣を改めない限りは、再発を繰り返すのはごく自然なことなのです。
それなのに、どういうわけか治療だけで体を治そうと考えている人が多いのです。
日常生活の習慣に問題があるのに、そのことを無視して、治療だけで解決できると思っているわけですから、これでは『病と治療の悪循環』を繰り返すことになっても仕様がありません。
そもそも、病になる根源の1つには、その人の生活習慣があるわけですから、その人の生活習慣がよければ悪くならなかったはずです。
病になるか、ならないかといいうことは、ここに1つの大きな原因があるわけです。
誰もが、みんな体を悪くするわけではありません。
生活習慣に問題がある人が体を悪くしやすいのです。
たとえば、腰痛の人は、腰の痛みを治せばいいと考えています。
しかし、誰もが腰痛になるわけではなく、生活習慣の中に腰痛になる原因がある人が腰痛になりやすいのです。
ですから、そういう人は、まず本来の原因となっている生活習慣を見直すべきなのです。
そうしないと、治療で一時的に腰の痛みを止めたとしても、腰痛を起こす原因となっている生活習慣を改めない限りは、本当に腰痛をなくすることはできないのです。
ですから、治療ということが分かってくると、第1に、本来の原因である生活習慣を改善することこそが最優先されるべき課題なのだということが理解できるはずです。
そして、治療ということは、その後で考えるべき第2の問題なのです。
このことが、治療というものを考える上で、とても重要なのです。
それを、治療だけで、何とかできると考えているとしたら、それはまだ治療というものが分かっていない人なのです。
生活習慣が原因になっているような病は、その悪い生活習慣は長年にわたって繰り返し行なわれているわけですから、体の悪いところも慢性的な状態になっています。
そういう人は、治療だけではなかなか治りにくいのです。
それに対して、事故などが原因で、瞬間的に体を悪くしてからそんなに時間が経過していないような場合は、比較的早く治りやすいのです。
しかし、長年持病に悩まされている人というのは、治療しても時間がかかるし、いったんは良くなっても元の生活に戻れば、悪い生活習慣を繰り返すことになりますから、また再発してしまいます。
悪い生活習慣が原因なのに、それを放置したままいっこうに改善していないわけですから、これではどんな治療を受けても良くなるはずがありません。
いくらいい治療を受けても、自分の悪い生活習慣で悪い状態にしているわけですから、それで治せると考えるほうに無理があることくらい理解できるでしょう。
それなのに、治療だけで治せると考えているとしたら、やはりその人は、まだ治療ということがよく分かっていないのです。
本当に治療ということが理解できれば、根元にある悪い生活習慣というものを根本から直さなければ駄目なのだということが理解できるはずです。
ですから、こうした根源となっている生活習慣に対する配慮がなされていない治療というのは、片手落ちの治療だと言わざるを得ません。
また、こうした生活習慣に対する指導がなされてない治療というものも、不完全なものだと言えるでしょう。
体 癖 か ら の 脱 出
力学整体では、せっかく矯正しても、長年の悪い習慣動作で、また悪い状態に戻ってしまうという事実を重視して、日常生活での習慣動作が徹底して工夫されているのが最大の特徴です。
それこそが、力学整体が他の治療法と大きく異なる点なのです。
それぞれの人には、長年の習慣動作で作られ、身に付いた「身体のクセ」というものがあります。
それを、力学整体では『体癖』と呼んでいます。
ちょうど植物の幹や茎などが曲がっていたりするのと同じように、体にもクセになっている状態が存在するのです。
力学整体では、『体縮』が固定した状態を、『体癖』という形で捉えているわけです。
その「体癖」が悪いものであれば、外見上は「姿勢の悪さ」や「体形の歪み」という姿勢や体型となってあらわれますし、運動面では「体の動きの悪さ」という関節機能障害となってあらわれます。
そして、「体縮」がその人の体の許容範囲内であればいいのですが、ある一定の限度を越えると、今度は「体調の悪さ」としてさまざまな症状が出始めます。
それをそのまま放置しておくと、ついには「病気」ということになってしまいます。
そこで、治療を受けることになるわけですが、体を治すために始めた治療によって、一時期は楽になっても、長い目で見れば「病気と治療の悪循環」を繰り返すことになったり、治療がクセになり「治療中毒」や「治療依存症」に陥り、治療を受けたばかりにかえって悪くなってしまうということがあるわけです。
それでは、なぜこんな馬鹿げたことが現実に起きてくるのでしょうか?
その原因は、これまでの治療が、「病気」というかたちで症状の出ている個所とか局所のみを治そうとか、「姿勢の悪さ」や「体の歪み」だけを正そうとかというアプローチしか行なってこなかったからです。
それでは、「体癖」が残されたままの状態ですから、いくら治療をしてもまた元の悪い状態に戻ってしまいます。
そこで、力学整体では、この「体癖」というものに着眼して、『悪い体癖』から『良い体癖』に作り変えるためのエクササイズを指導しているのも、実はここに大きな理由があるからです。
ところが、この「体癖」というものを作り変える作業というのが大変なことなのです。
「体癖」というものは、長年月にわたって作られて来たものですから、作り変えると言っても、そう簡単に一朝一夕というわけにはいかないのです。
しかも、この「体癖」は自分が作って来たものですから、人にやってもらうだけの治療では、「体癖」を直すといってもどうしても限界があるのです。
だから、この「体癖」を修正するためには、どうしても自分で「体癖」を修正するための体操と運動をやらなければなりません。
そして、この「体癖」を作り変えるためには重要なポイントが2つあります。
それは、全身のバランスがとれた良い「体癖」が出来上がるまでは、
1.できるだけ矯正の間隔はあけないで詰めて行なう
2.反復継続して、繰り返し行なう
というものです。
これらの「体癖」を作り変える2つのコツは、人にやってもらうだけの治療では、どうしたって足りないのです。
「悪い体癖」が修正されて、「良い体癖」が出来上がるまでは、自分で頑張っていただかなくてはなりません。
しかし、「悪い体癖」が修正されて「良い体癖」が出来上がれば、元の悪い状態に戻るということもなくなって来きますから、それからは、それを維持するようにさえすればいいわけですから楽です。